「ん〜、いい天気だね!」



  は大きな伸びをして、隣にいる少年に話しかける。

 少年…シンは、車を運転しながら、少し不機嫌そうに応えた。


「そーだね」

「ねえ、どうしてそんな不機嫌なの?」


 風でなびく髪をおさえながら、ずっと思っていたことを聞く。

 今日は休暇ってことで、気分転換に外で買い物をしようと思って彼を誘った。

 いつもミネルバの中にいたら、ストレスとか溜まるし、退屈だろうし。

 誘ったときはまるで子犬のように嬉しそうにしていたのに、街に出てきたら、不機嫌になっちゃって…。

 久しぶりの2人っきりなのに……。


 シンは、寂しそうな表情をしている彼女に、正直に話した。




「だって、他の人の買い物もしなきゃいけないから」




「へ?」















   休暇の過ごし方















 街のある場所で車を止め、バタンと閉める。

 先程は拍子抜けてしまった。

 予想外の理由だった為 が変な声を出すと、もっとシンは不機嫌になってしまって。

 困った、というのと同時に可愛いなあ…と思う。

 車を降りて一緒に歩いている彼に、優しく微笑んだ。


「他の人の物も買うけど、私は一緒にシンといたかったから、誘ったんだよ」

「俺も同じだよ」

「だったら、そんなに怒らない。せっかくの休暇なんだから、もっと楽しもうよ。ね?」


 そうだ。今は誰にも邪魔されない、2人っきりなんだ。

 隣で首をかしげて自分を見上げている に、「うん」と頷く。


「ごめん、 。俺、わがまま言って」

「別に気にしてないよ。それがシンの可愛いところなんだし」

「う、うるさい!」

「あはは、もう照れちゃって!」


 可愛い、と言われ、照れるシン。

 それを見て、シンの反応を見て遊んでいる

 そして、どちらともなく腕を絡める。

 2人はじゃれ合いながら、足を進めていった。




















「ねえ、これ綺麗じゃない?」

「どれ?」


 あるアクセサリー屋に入った2人。

 中にはいろいろな形や綺麗な色のアクセサリーがたくさん置いてある。

 別々に見ていたのだが、 が気に入った物を見つけたらしく、シンを呼ぶ。

 彼女が見つけた物は、ハートが半分に分かれていて、2つあれば1つの形になるペアのアクセサリーだった。

 きらきらしていて、ちょっと薄いピンク。

  はそれを手のひらにのせてみた。


「可愛いよね、これ」

「うん、そうだね。 に似合うよ、絶対」

「ありがと、シン」


 頬を少し赤く染めて笑う彼女に、シンはドキッとする。

 あまりにも可愛くて。




2人で会計を済ませると、店の外へ出て、ベンチに座る。

そして、早速アクセサリーをつけた。

 彼の言ったとおり、彼女によく似合っていた。

 きらりと胸で片割れのハートが光っている。

 もう1つはシンの胸の上で光っていた。

 アクセサリーに は触れる。


「シンにも似合ってるよ」

「そうかな?」

「うん。これで離れ離れにならないね」

「?」


 彼女の言葉に首をかしげる。

 そんな彼を見て、「なんでもないよ」と微笑み返す。

 少し気になったが、何でもないと言われた以上、追求することをやめた。

 本当は、追求したい。

 他人のことなら別にどうでもいいけど、自分の大好きな のことだから。

 もっと知りたいんだ。

 そう思っていると、気持ちと一緒に身体も動いた。



「ち、ちょっとシン…?」



 突然抱きしめられ、戸惑う。

 ここがミネルバの中なら別に構わないのだが、今は街の中だ。

 座りながらだからそんなに目立たないかもしれないが、それでも人目を引く。


「シン、恥かしいよ。離してっ」

「あ、ごめん」


 そう言うと、そっと離してくれる。

 赤くなった顔で見上げると、シンはしゅんとなっていて。

 ちょっと怒ろうかと思っていたが、そんな気持ちはどこかへ吹き飛んでしまった。


「もうシンは…」

「ごめん、 。これから気をつけるから」

「あ、うん…?」


 何に気をつけるのか分からなかったが、とりあえず頷いておく。

 彼はベンチから立ち上がると、彼女に手を差し出した。


「もっと他の店にも行こうよ。いろいろ買わないといけないし」

「そうね」


 そっとシンの手に自分の手を重ねる。

 2つの手はそのまま絡み合う。

 2人は微笑み合うと、他の人たちから頼まれた物を買うために、街をぶらぶらと歩きつつ、店を覗いて行った。




















 全て買い終え、車に荷物を置きにいこうとした時、ドンッと が誰かにぶつかった。


「きゃ!」


!」


 ぶつかって倒れそうになる彼女を支える。

 その時に、彼女が持っていた袋の中から少し買った物が落ちた。

 シンは、ギンッと今ぶつかってきた人を睨みつける。

 シンよりも少し背の高い柄の悪そうな男だった。


 柄の悪そうな男は、2人を見下ろす。



「何処見て歩いてんだ!?痛えじゃねえか!ああ!?」



 お決まりのパターンと言えばそうなのだが。

 男は、彼に支えられている の腕を掴み、上から下までじろじろ見る。

 その目は厭らしい目つき。

 ミニスカートの下から見える白い脚、大きく開いた胸元。

 特にその二点をくいつくように見ている男は、舌を出した。


「なあ、姉ちゃん。その身体で、この痛いところを癒してくれよ」

「なっ…!」

「いいだろ?金の代わりに身体で払えば許してやるって言ってるんだよ」


 男の言葉を聞いて、気持ち悪くてゾワッとする。

 見ていたくなくて顔を背けると、無理矢理向かされる。

 こんな奴、MSさえされば……!

 所詮自分は女。

 MSの操縦に関しては誰にも負けないのに、MSなしではこんな男にも勝てない。

 目をぎゅっと瞑っていると、今まで黙っていたシンが動いた。



「うごおっ!」



 男の腹に思いっきり蹴りを入れたのだ。

 ようやく放される手。

  はいきなり放され体制をくずしてしまいそうになると、シンが支えてくれた。




「ありがとう、シン」




 そう言って彼を見ると、彼は怒りに震えていた。

自分は相手の眼中になくて、人の彼女じろじろ見て、腕掴んで、気持ち悪い声出して。

 普段から怒りやすい為、あまり怒らないようにと言われていたから珍しく我慢していたが、もう限界。


「あんた、さっきから人の彼女じろじろ見やがって!どういうつもりだよ!」

「この野郎……!」

「絶対許さないからな!俺は、あんたを!!!」


 怒鳴り散らすと、シンはもう一発、今度は顔面に入れる。

 男は声を上げて体制を崩して、その場に倒れた。

 1人ぽかんとしている の手を掴むと、そのまま走り出した。



「え、シン!?」



「あいつが起きてこないうちにさっさと逃げるぞ!」



 人と人との間を走り抜け、周りが振り向くのを気にしないで、早く車を止めた場所へ戻っていった。




















「はあ〜大変だったね〜」



 街から少し離れた所に車を止め、ここから見える海に沈んでいく夕日を眺める。

 男に絡まれた当の本人は、さっきのことは全く気にしていないかのように言う。

 一方シンは、何も答えないでじっと夕日を見ていた。




「………さっきは、絡まれた所を助けてくれて、ありがとう」




 俯いて、小さく呟く。

 きっとさっきの事気にしているんだろうと思って、お礼を言ってみた。

 別に気にする必要なんてないし、自分だって気にしてないから。

 そう思ってもう一度彼を見ようとしたら、キスされた。

 短いキス。

 唇を離すと、シンはずっと聞きたかったことを口にした。


「俺、気になってたんだけど、あの時何を言おうとしたの?」

「あの時?」

「うん。アクセサリーを買った時に、何か言おうとしてただろ?ずっと気になってたんだ」


 また予想外のことに、少し驚く。

 自分のハートに触れ、瞳を閉じた。



「これって2つないと1つの形にならないでしょ?1つだけじゃ形になれない」



「うん」



「遠く離れても、ずっと一緒にいたい。心も身体も。いつまでも一緒にいたくて」



 恥かしそうに話す にシンは笑みを浮かべると、頬に触れる。

 頬に触れた手の親指で桃色の唇をなぞる。





「大丈夫だよ。俺が守るから。絶対離さないから」





「ん、シン……」





 そして、もう一度触れ合う唇。

 今度は長く甘いキスだった。
































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雫様、22222hitリクエストしてくださり、ありがとうございます!

大変遅くなり、申し訳ございません;;

相手はシンで、買い物に出掛けたら絡まれる、という要望の元書かせて頂きましたが…どうでしょうか?

シンが偽者っぽくなってしまったような気がします;;

こんな小説で申し訳ございません!!(土下座)

返品したかったら、遠慮なく返品してくださって結構ですので!


リクエスト、ありがとうございました!            2006 / / 4 かりん 


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