この勇気はあなたがくれた 















「はい、これ」



「………何だ、これは」


 寮のエルエルフの部屋。

 現在、ハルトは不在中。

 自分の目の前に差し出された物に、たっぷりと間をあけて口を開くエルエルフ。

 それを出した は、訝しげな眼差しを受け止めながらも、微笑みを絶やさない。


「何って、クリスマスプレゼント。今日はクリスマスだから」

「クリスマス?」

「ジオールにはそういう日があるんだけど、ドルシアには無いの?」

「知らん。興味が無いな」


 素っ気無く返され、 は思わず溜息をつく。

 エルエルフ自身は全く興味無いが、ドルシアにいた頃を思い返してみると、ハーノイン辺りが騒いていたような気がする。

 貰ったプレゼントの量を自慢されたが、全て一蹴した。

 気にも止めていなかった自分がまさか貰うとは思わず、だが何故貰うのか理解出来ず、彼女を鋭い眼で見据える。

 すると、深い意味は無いよと、 は眉尻を下げて笑う。


「エルエルフには日頃からお世話になっているから、そのお礼。初めはいろいろあったけれど、貴方には助けられているし」

「別にお前達の為じゃない。俺自身の目的の為に利用しているにすぎないのに?」

「知ってる。でも、事実上、ハルト達は助かってる。貴方の頭脳無しじゃ、この国はもう生きていけないわ」

「それはそれで大問題だな」


 ふ、とエルエルフが不敵に笑うと、確かにね、と彼女も肩をすくめて笑う。

 ――…そう言いつつも、私が一番助けてもらっているんだけどね

 外側には一切出さず、 は胸中で苦笑いを浮かべる。

 自分がハルト達の為により力を尽くしたいと思えるようになったのは、エルエルフがいたからだ。

 利用されているのは分かっているけれど、身を挺してまでヴァルヴレイヴのパイロットを守るのは、彼に目的を果たしてもらいたいから。

 ハルト達を守るより前に、エルエルフの為に自分は在る。

 今まで何も無かった自分に生きる理由を与えてくれた彼の為に。

 だから、出会いの形としては最悪だったけれど、エルエルフがいてくれて本当に良かったと、心から思っている。

 礼という形にはしているが、その想いを込めたプレゼントを、再度彼の前に差し出す。


「だから、貰ってくれると嬉しいんだけど」

「……」


 はあ、と小さく溜息をつくと、渋々といった様子で受け取ってくれた。

  は目元を綻ばせると、ベッドに腰掛けているエルエルフの隣りに静かに座る。

 無音の空間に、ギシ、と僅かに軋むスプリング。

 窓から見える月を背にした彼は、とても綺麗だった。

 月明かりに縁どられた銀髪はまるで水面に映る夕日のようにキラキラと輝いており、その中には強い光の宿る紫の瞳。

 自分にとってあまりにも眩しすぎるそれに、このまま消えていかないでと触れたいという思いで、ゆっくりと手を伸ばす。

 指が頬に触れても、エルエルフは微動だにせず、黙って受け入れている。

  は切なげに目を細め、頬から手を離すと、彼の肩に頭を預ける。

 伝わってくる体温が、とても愛おしい。

 彼の気持ちが、自分に向けられることは無くても。


「エルエルフ」

「何だ」

「私、ずっと貴方の傍にいる。この力は全て、貴方の為に振るう」

「…」

「だから、これからも前を見据えていて。背中は、私とハルトが守るから」


  は口元に小さく笑みを浮かべ、目を閉じる。

 長い睫毛が、月明かりによって白い頬に影を落とす。

 何を勝手な事を言っているのだと、嘲笑したくなってしまう。

 ハルトはハルトで、自分の守りたい大切なものの為にヴァルヴレイヴに乗っているというのに。

 その彼さえも手駒だと少なからず考えてしまっている自分は、何と酷い人間なのだろう。

 友達……の筈なのに。





 頭上から名を呼ばれ、 は顔を上げる。

 宝石のような透き通った瞳が、真っ直ぐに見つめていた。


「俺の目的の為にはお前の力が必要だ。傍に居ろ。離れるな」

「…エルエルフ」

「これは契約じゃない。命令だ」


 エルエルフの手が、言葉とは裏腹に、優しく頬を包み込む。

 ――何て幸せなクリスマスなんだろう…。

  は身体が熱くなり、視界が徐々に滲んでいく。

 この言葉の真意が、どこにあるのかは分からない。

 彼にとっては、自分が友人達に対して思っているように、ただの手駒なのかもしれない。

 だが、それでも十分だ。

 自分にとって、最高のクリスマスプレゼントなのだから。


「…はい」


 彼女は、蕩けるような柔らかな微笑みを浮かべ、小さく頷く。

 これで、彼の為に犠牲にすることが出来る。

 友達や国、そして――自分自身でさえも。









































>>お題をお借りしたサイト → 確かに恋だった


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初エルエルフがこれって、あまりにも酷すぎて何も言えません…。

エルエルフファンの方、本当に申し訳ありません!!(土下座)

エルエルフのキャラは掴めていないし、甘い要素も何も無く、最後もちょっと さんが狂っているし…;;

ジオールの主人公はこんな子ではない予定です。エルエルフの為、という点は同じなのですが、依存になってしまいました。

ちなみに、エルエルフの方も さんの事は大切に思っていたりします。リーゼロッテとは別の意味で、とはなりますが。

クリスマス夢が年明けになってしまい、申し訳ありませんでした(土下座)

アニメは終わってしまいましたが、これから少しずつ短編を更新していけたらと思っています!

エルエルフ大好きなので!!(笑)


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


(2014/01/13)

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