最近、三席の には不満があった。

 自分の隊の隊長である日番谷冬獅郎は、最近彼の幼馴染である雛森と仲が良い。

 仲が良いというか、今言ったとおり幼馴染なのだから、元々仲が良いのだけれど。

 最近は、特に仲が良くて、よく話している場面を見かける。

 密かに日番谷に想いを寄せている には、他の隊士達のように笑って見過ごせなかった。















   君を不安にさせたくないから。















「はあー」

「どうしたのよ、そんな盛大な溜息をついて」


 机にうつ伏せになって、長い溜息をついた に、松本は声をかける。

 今は日番谷はいなく、2人だけ。

 この溜息とこの不満の元凶である彼の机を睨みつけた。


「最近、いろいろとありましてねぇ…」

「大変ねぇ、 も。そんなに気になるの?」


 ギクッと反応する。

 誰にも相談はしていないはずなのに、どうやら松本にはバレているらしい。

 松本には、というより、他の隊士にも実はバレている。

 日番谷と話している時の態度、日番谷を見つめる瞳がとても熱いのは、皆知っているのだ。


「知ってたんですか、松本さん」

「もちろんよ!というか、あんたの行動はとても分かりやすいのよ」

「え!?そんなに分かりやすいんですか!?」


 そこで初めて気づいたらしい。

 可愛い後輩を笑っていると、まだどんよりとした雰囲気になる。

 松本は、はぁと溜息をついて、 の机に寄り掛かった。



「あたしは心配する必要ないと思うわよ?」



「どうしてですか…?あんなに仲良くしてるのに、いつもすぐ出掛けちゃうのに!」



 片思いだけど、本気で好きだから。

 涙声になってしまった最後の方。

 目元にも少し溜まっている涙を拭って、「ごめんなさい」とすぐ謝る。

 この時、松本は自分の隊長を恨んだ。

 この子を泣かすなんて、許しませんよ?




















 同時刻、ある部屋に話題になっていた日番谷と雛森がいた。

 もう用は終わったようで、彼は部屋を出て行こうとしている所であった。


「悪ぃな、雛森」

「別にいいよ。あの子のためだもんね!」

「うるせえよ!じゃあな」


 逃げるように隊舎へ戻っていく。

 雛森は一息ついて、自分も隊舎へ戻っていった。










 

 廊下を歩きながら、自分の手中にある物を眺める。

 これをあげたら、あいつは本当に喜んでくれるのか…?

 最近、元気なさそうだから、元気になるといいがな。


 そんな願いを込めた物を強く握り、執務室に入っていく。


「すまねえ、松本。また空けちまって…」


 彼の声はだんだん小さくなる。

 中には、松本の姿はない。

 その代わり、 が自分の机にうつ伏せで寝ている姿だけであった。


 日番谷は、自分の椅子に座る。

 2人しかいない為、しん…と静まる。

 時計の音が大きく聞こえる。

 頬杖をし、彼女の方を向く。

 ここからではよく見えないけれど、少し寝顔を見ることが出来た。


 可愛い寝顔。

 滅多に見せない微笑んだ表情で観察していると、ある事に気づく。

  の目元に涙があった。

 そして、ゆっくりと頬を伝っていく。

 眠くて涙が出たのか、それとも何か悲しい事があったのか、どちらかは分からないが、拭ってやりたくて。


 椅子から立ち上がり、涙を拭うために傍に寄ると、口が小さく動いた。



「……私、いやなんだよ…」



「?」



 起きたのかと身構えたが、その様子はなく。

 どうやら、それは寝言のようで。

 何が嫌なのか少し気になって、小さな寝言を聞き逃さないようにした。



「貴方が…他の人と話してる…の…」

「誰だ、貴方って?」

「…雛森さんと仲良くしてるの、嫌なんだよ…」

「……」



 それ以降、寝言を言うことはなかった。

 でも、これではっきりした。

 最近元気が無かったのは、俺のせいだったって事が。

 こんな嫌な思いをさせるなんて、俺もまだまだだな…。


 日番谷は、机の上に置いたある物をもう一度手に取り、強く握る。

 そして、 を起こした。


「起きろ」

「……」

、起きろ」

「……んー」


 眠たそうに目を開ける。

 だるい身体を起こし目をこすりながら声のした方を見ると、そこには日番谷隊長が。

 ぼんやりとした目が、一気に覚醒した。


「うわわわわっ!!ひ、日番谷隊長っ!!ど、どうしてここに!?」

「どういうびっくりの仕方だよ、お前…」

「だって起きたら、隊長がいるんですもん!そりゃびっくりしますよー!」


 寝起きから元気だな、と喉の奥で笑う。

 彼の反応を見て、更に慌てる。

 そして、普段見せない楽しそうな表情に、彼女は内心ドキドキしていた。

 いつもの凛々しい表情じゃないから。


 日番谷は、机に寄りかかって話し始める。


「お前って、最近元気なかったな」

「え?」

「俺と雛森のことを不安に思ってたのか?」

「!」


 図星だった為、俯いてしまう。

 やっぱり、私って分かりやすいから、隊長にも分かっちゃったんだ…。

 よりにもよって、一番知られたくなかった相手に。

 俯いてしまい、いっこうに顔を上げない に、彼は溜息をついた。



「不安になることなんてないぜ。俺と雛森は…」

「…もう聞きたくないです!」

「聞けよ」

「嫌です!」

「嫌じゃねえ、聞け!」

「嫌っ……!」



 全部言い切る前に、「聞きたくない」と遮られ、カチンとなって咄嗟に抱きしめた。

 黙らせる為には、話を聞いてもらう為には、この方法しかないと思って。

 抱きしめられた彼女は目を見開いており、抱きしめた当人も驚いていた。

 どうして自分がこんな行動を取ったのか……そうしたかったから?


「日番谷隊長…?」


「すまねぇ」


 そっと身体を離される。

 互いに顔は赤い。

 日番谷に比べ、 の方が断然赤いが。

 2人は、黙っている。


 数分の沈黙の後、彼はずっと持っていた物を目の前に出した。

 それを不思議そうに見る。


「これは…?」

「見れば分かるだろ、首飾り」

「何処で手に入れたんですか?こんなに綺麗なもの」

「雛森に頼んだ。俺では、こういう事は分からねえから」

「あっ…」


 彼の言葉でようやく理解する。

 最近どうしてあんなにも仲が良かったのか。

 それは、もしかして…。






「私の為に、ですか…?」






 期待と不安が混ざり合う。

 日番谷は彼女の手をとり、首飾りを手のひらにのせた。

 それは、七色に光っていて、とても綺麗だ。

 この尸魂界の一体何処にあったのか不思議だが、それは置いといて。

 手のひらにあるそれに、見惚れてしまった。




「綺麗…」




「お前のために用意したんだ、




「え…?」




 首飾りから日番谷に視線を戻す。

 真剣な表情で、自分を見つめていた。

 嬉しくて嬉しくて、首飾りを胸の前で抱きしめる。

 一粒の涙が頬を伝う。


「ど、どうしたんだ…?」

「すごく嬉しいです、隊長…っ」

「不安にさせてすまねえな。もう不安になんてさせないから」

「……はい」


 涙を流しながら、満面の笑みを浮かべる。

 日番谷は、それを今度こそ手で拭うと、優しく抱きしめた。
































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璃麻様、長い間お待たせしてしまって申し訳ございません;;

ようやくリクエスト夢、書き上げることが出来ました。

ちゃんと雛森に嫉妬しているでしょうか…?

甘甘になってるでしょうか…?

今回、ネックレスを首飾りという表現にしました。

尸魂界にあるか、分かりませんので。

返品はいつでも可能なので、遠慮しないでしてください。


キャラレスのお返事&リクエスト、ありがとうございました!  2006 / / 10 かりん


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