1. ラビ 「平気じゃないのは、たぶんオレ」
D.Gray-man // 連載ヒロイン
オレは、ブックマンの後継者。
裏歴史を書き留める歴史の傍観者。一ヵ所には留まらず、流れ、流離う。この目で見てきたものは全て記していく。
決して、情を移してはいけない。流されてはいけない。全て終わったら、何事も無かったように去っていく。感情はいらない、他者に干渉してはいけない。
それが、ブックマンの掟。
それなのに、オレはその掟を既に破ってしまっている。
教団に来て、大事な女が出来た。心から愛している。ずっと傍で守っていきたい。
そんな人が出来た。
出会った時に一目惚れをしてから、知らず知らずのうちに募っていった想い。いつの間にか、捨てられない程大きなものになっていた。
教団を出る時、捨てていかなければならないものなのに。そう危険を感じて、オレは一度突き放した。
「近寄るな」と。
涙を流し、去っていくお前を見て、突き放して良かった筈のオレの心が痛んだ。張り裂けそうなくらい、痛くて痛くて堪らなかった。どれだけ好きだったのか、この時に初めて分かった。
そして、初めて「ブックマン」という肩書きが邪魔だと思った。
これさえなければ、と。
でも、ブックマンの跡継ぎになることは後悔していない。
今はまた傍にいてくれるお前。笑顔で、あの声で、オレの名前を呼んでくれる。
「ラビ」
ほら、それだけで身体が、心が温かくなる。それだけ、オレはお前が好きだということ。
だが、本当に此処を出て行くことになった時、オレは何事も無かったように去っていけるのか。
捨てて…置いていけるのか。
きっと泣いているだろうお前に振り向くことをせず、次の場所へ向かえるのか。
――無理さ。そんなこと。
あの時のように、泣きながらも頑張って笑みを浮かべたお前に、「さよなら」と言って平気でいられるのか。
――いや、いられない。
たとえ、自分から突き放しても、去って行っても、お前が平気だとしても、オレが平気じゃない。もうそんなことは出来ない。
全てが、もう手遅れなのだから。
2. 神田ユウ 「幼い日の幻影」
D.Gray-man // 連載ヒロイン
お前は知らない。俺がいつから、どれだけお前の事を想っているかということを。お前が選んだあいつよりも。
幼い頃から一緒に育った。
遊ぶのも何をするのも、俺達は一緒だった。
お前は俺を「ユウ」と呼んで、よく後ろをついてきた。嬉しそうに。
無視をすると泣きそうになり、振り向いてやれば笑顔に変わる。ころころと表情が変わるお前に、よく驚かされていた事を覚えている。驚かされていたというよりも、見惚れていたと言った方が正しいかもしれない。
一緒にいるうちに、俺の中で「守りたい」という感情が芽生えてきた。俺のこの手で、守り抜いてやると。
だが、お前が黒の教団に入り、俺もある理由で入団すると、お前は変わっていた。
自分の身は自分で守る。
自分が守らなければ、犠牲者が増えてしまう。
必死に鍛錬に打ち込む姿から、その空気が滲み出ていた。
「私ね、エクソシストになってアクマを壊して、皆を守っていくの」
あの悲しみを繰り返さない為に。
そう語るお前の口から、声から、眼差しから意志の強さが伝わってくる。
――だったら。
「俺は、お前を守る為に強くなってやるよ」
自然と口に出た言葉に目を丸くし、すぐに笑顔になった。
「ふふ、ありがと。ユウが守ってくれるなら、凄く心強いね」
この笑顔を守る為、なんていうのは俺の柄じゃないが、その頃の俺はそう心に誓った。
―――俺が、絶対お前を守る。
だが、8年が経ったある日、あいつはやってきた。
お前が心を許しているあいつが……ラビという入団者が。
続:「変わっていくお前、変わらない俺」
※「幼い日の幻影」の続き
いつの間にか、お前は俺の事を「ユウ」と呼ばなくなった。
「ユウくん」と、変わっていた。
何時からかは、もう覚えていない。
お前に名前で呼ばれる事が心地良かった。お前だけに呼ぶ事を許していたことを知っていたか?
ラビが入団した時に見たお前の瞳。哀れんでいるように見えたが、瞳の奥に確かに見た。
――あいつに心を奪われていたのが分かった。分かってしまった。
だから、あんなにラビの事が気にかかったのだろう。
俺との会話にも、何度かその名が出ていた。その度に、身体の奥から怒りのようなモノが湧き上がっていたのは、よく覚えている。
だが、それは表には決して出さなかった。お前の事を、ずっと大切に想っていたからだ。
それから、お前はあいつを選んだ。
どうして俺じゃないと、何度思ったことか。
俺の方が長い間見てきたし、ずっと想っていたのに。だが、それを打ち明けなかったら意味は無い。
……そんなこと分かっている。先に伝えておけばと、何度も何度も後悔をした。
だが、過去の事など気にしていても仕方がない。
俺は、ただ前を見据えていく。
お前がどうしてラビを選んだかは分からない。それでも、俺はお前だけを想っている。
俺の全てで、お前を護ってやる。
絶対口にはしないこの想いを、胸の中で告げよう。
「愛している」
お前が昔と変わってしまっていても、俺のこの気持ちは一生変わらない。
3. 日番谷冬獅郎 「それは反則」
BLEACH // 連載ヒロイン
「女性死神協会のお願い…?」
私は、執務室の冬獅郎くんの机の上にあるプリントを見つける。それは、瀞霊廷内の女性死神達によって構成された女性の為の組合からだった。一応、私も所属している。
「冬獅郎くんの写真集なんて知らない…」
プリントには、重版するとか何とか記載されている。
私には秘密でこんな事してたの?しかも、いつの間に冬獅郎くんの写真を…?
それを睨みつけるようにじっと見ていたら、後ろから扉の開く音がした。
「あ、冬獅郎くん」
「何してんだ、お前?」
近づいてくる冬獅郎くんに、はい、とプリントを見せる。上から下まで目を通すと、盛大に溜息をついた。もしかして、この事を知っていただろうか。
「ったく、松本の野郎…」
「写真集のこと知ってたの?」
「ああ。前にもコメントをよこせって言われてな。適当に返したんだが…」
「そうなんだ…」
はぁ…と、思わず溜息が零れる。
私だけが知らなくて、仲間外れにされていたんだ。何だか除け者にされた気がして寂しい。
それに、その写真集ちょっと欲しいし。
「溜息なんかついてると、幸せが逃げるらしいぜ」
「うん。……私も欲しかったな」
「は?何を?」
「冬獅郎くんの写真集」
私がそう言ったら、今度は冬獅郎くんが2回目の溜息。
――冬獅郎くんの方こそ、幸せが逃げちゃうよ。
こっそりそう思ってると、「そんなもんいらねえだろ」と吐き捨てるように言われる。そんな言い方しなくたっていいのに、と思う。私は、頬を膨らませて抗議した。
「何でそんなこと言うの?好きな人が写ってるんだもの、私だって…」
「写真集なんぞ買わなくても、生の俺がいるだろ」
「え?」
「あんなもん、俺の一部しか無え。俺の全てじゃない。俺の全ては、お前だけが知っていればいいんだよ」
「冬獅郎くん…」
恥かしそうに顔を背けてる冬獅郎くんに、思わず抱きつく。
嬉しい、すごい幸せ…!背中の優しくて温かい腕を感じながら、私は思った。
”俺の全ては、お前だけが知っていればいい”だなんて、そんな言葉反則だよ。
私だってそう思っている。
私の全ても、貴方だけに知っていてもらいたい。
だから、いっぱい見せてね。誰も知らない貴方で、私の中をいっぱいにして。
……あ、でも、やっぱり写真集は欲しいかも。
4. 坂田銀時 「そっと耳打ち」
銀魂 // 連載ヒロイン
「なァー」
「どうしたの、銀時?」
「スナックお登勢」の2階にある「万事屋銀ちゃん」。今は、私と万事屋の店主・坂田銀時しかいない。
私が洗濯をしていると、奥から呼ばれたので振り向いてみたら、呼んだ本人はソファに寝転んでジャンプを読んでいて。あえて無視し続きを干していると、また呼ばれた。
「なァー」
「…どうしたのよ、銀時?用があるなら、ちゃんと言って」
とりあえず全て干さなければならないので、急ぎめに干す。
全て終わって居間へ行けば、銀時は相変わらずジャンプに集中。私は小さく溜息をつき向かい側のソファに座ると、銀時はジャンプをテーブルに置いて起き上がる。そして、「こっちへ来い」と自分の隣りを叩いた。
「もう本当にどうしたの―――…って、銀時?」
素直に隣りに座った途端、膝枕をされた。自分を見つめる死んだ魚のような双眸。今日は口数も少ないし、疲れているのかもしれない。
「銀時、疲れているの?」
「まァな。昨日久々の仕事だったから、疲れちまったぜ」
「本当に仕事だけ?」
「何、俺を疑ってんの?いやいや、本当だって!俺はお前には嘘つかねーって決めてるから!」
「じゃあ、ギャンブルはやってない?」
「やりました」
ペシッ!
即答に、思わず銀時の頭にチョップを食らわせる。今、嘘はつかないって言ったばかりなのに。
そんな強く叩いたわけでもないのに、凄く痛そうな顔をされる。何だか、まるでこっちが悪い事したみたいじゃない。
私は溜息をつき、まだ痛がっている銀時の髪を撫でた。
「ギャンブルは控えてって言ってるでしょ?賭け事は確かに楽しいけど、お金がすぐに無くなっちゃうんだから」
「わーってるよォ。でもな、ギャンブルの女神が俺を呼ぶんだよ。今やれば勝てる〜って、頭の中にこうビビビッてくんの」
「ハイハイ、分かった」
「うわっ、簡単に片付けられたよ!銀さん、泣いちゃう」
泣くマネをする同い年に、呆れてしまう。
でも、そんな所も好きな自分がいる。毎日毎日だらだらしていて、ジャンプを読んでいて、甘い物を食べて、お酒を飲んで、プー太郎で。
それでも、時々見せる自分の信じる侍魂を貫く姿は、言葉に言い表せない程に格好良い。本当にべた惚れなんだと自覚する。
「ねぇ、銀時」
「んー?」
気持ち良さそうに目を瞑っている銀時のフワフワした銀色の髪を撫でながら、この一言に自分の想いを込めた。
「大好き」
「…大好きってオメー、よくそんな恥かしい言葉言えんなァ」
「じゃあ、何ならいいの?」
恥かしい気持ちを抑えて、精一杯言ったのに!
銀時は目を開いてニヤリと笑い、睨みつけている私の腕を思いっきり引っ張った。
「俺ァ、愛してるよ」
そっと耳打ちされた言葉と降ってきたのは、貴方の柔らかくて甘いキス。
5. フォンヴォルテール卿グウェンダル 「愛しいあなたのとなりで。」
今日からマ王! // グウェンダルの部下・補佐(魔族)
私は、約20年程前に地球からこの眞魔国へやってきた。
もちろん人間(と言っても、人間と魔族のハーフ)。けれど、魔族として生きる事に決めた。
それは、私にこの世界の事や多くの事を教えてくれた、あの人の為に――。
「グウェンダル」
「…どうした」
私が呼べば、仕事中でも貴方はいつも返事をしてくれる。
彼の名は、フォンヴォルテール卿グウェンダル。
この眞魔国の摂政であり、誰よりもこの国を愛し、誰よりも家族を愛している。
性格は、冷徹で皮肉屋で美丈夫と言われている。確かにそうだと思うけれど、本当は優しい人。新しい魔王陛下を支え、いつも見守っている。
それに、ここに来たばかりで訳の分からない状態の私を引き取り、全てを教えてくれた。
「何か用があるのではないか?」
「え?あ…ごめんなさい。ボーッとしてしまって」
なかなか用件を言わない私を不審に思ったのか、グウェンダルは眉間に皺を寄せる。
綺麗な顔なのに勿体無いと思う。
グウェンダルは、いつも眉間に皺を寄せて厳しい表情をしているけれど、本当は凄く美形。グウェンダルだけじゃなく、彼の兄妹やこの城にいる人みんな。女の私でも、心から羨ましいと思ってしまう。
私は、私の言葉を待っていてくれているグウェンダルを見て、これ以上待たせたらいけないと思い話し出す。
「有利陛下が即位されてから、この国は凄く変わったなと思ったのです」
「…」
「長い間敵対していた魔族と人間が手を取り合うようになって…。陛下は凄い方ですね」
「ふん。ユーリは何事も見逃せないのだろう。あいつは、すぐに厄介事に首を突っ込む」
「ふふ。そんな事言っていても、そんな陛下が好きなのでしょう?」
「なっ…」
私が笑いながら言うと、グウェンダルは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をする。
それからすぐにいつもの顔に戻り、「余計な事を言う暇があるなら、さっさとやれ」と言って書類を書き始めた。
私はそんなグウェンダルをじっと見つめた後、彼の後ろにある大きな窓に視線を移す。澄んだ青い空が広がっている。
私はその青空を見ながら、心の中で呟いた
――貴方にお仕えする事が出来て、今日も私はとても幸せです。
※お題をお借りしています※
1.2.3.4... 恋したくなるお題 様